交響詩篇エウレカセブン テレビ版の感想など

比較的アニメは良く見ます。三文芝居のドラマを見るよりよっぽど面白いですから。しかし今期はあまり見るものがありませんね。数は多いのですが質の悪さが相変わらず目立ちます。業界の地位を貶しめるだけだと思うんですけどね。といってもビジネスモデルとして成立させるためには、ああいった類のものも造らなければいけないんでしょうが。難しいところですね。

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さて、映画化に便乗して、テレビ版のBDとDVDがリリースされたエウレカセブン。ブルーレイのほうを買ってしまいました。シリーズアニメを購入するのは初めて。しめて6万円。財布が泣いています。なんでこんなに高いんでしょうね。結局価格を下げても購買層は限られている、だったら価格を大幅に上げて、必ず購入するであろうコア層から搾り取ってやろうという方針なんでしょう。まんまとその方針に乗っかっているわけですが。


ということで視聴後の感想を少し。

あらすじとかはwikiを見てください。簡単に説明すると、知的生命体であるスカブ・コーラルとの対立・対話を通じて主人公であるレントン少年の成長を描く物語です。そして、この物語の世界観を描く上で現実世界から様々な引用がされていることがこの作品の大きな特徴でしょう。
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まず、話のバックボーンとなる「王(父)殺し」を象徴するアイテムとして、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』が度々登場します。敵の親玉であるデューイ・ノヴァクと第三の主人公とも言うべきゲッコーステイトのリーダー、ホランド・ノヴァクの愛読書としても。さらりとドストエフスキーも引用されています。ヴォダラクの高僧ノルブがボソッと「ラスコーリニコフにでもなるつもりか」と作中で喋っていますね。ラスコーリニコフは『罪と罰』の主人公。余談ですが、ドストエフスキー最期の作品である『カラマーゾフの兄弟』のメインテーマがまさに「王(父)殺し」です。
サブカルチャーとしてのアニメの中で、サブカルチャーを表現しているのも面白いところ。主人公が所属するゲッコーステイトのメンバーはサーフィンに良く似たリフボード、テクノ等を愛好しており、社会へのカウンターとして政治的にも利用している姿が描かれています。また、劇中音楽として電気グルーヴスーパーカーなど、所謂打ちこみ系の日本のバンド音楽が使用されており、このあたりが従来のアニメファンから批判を受ける一つの要因となったのかもしれません。
しかし、最も批判を受ける要因となったのが、過去のアニメや映画作品からのオマージュやパロディ(引用)でしょう。放映中はパクリパクリとよく批判を受けていたような印象があります。wikiから抜粋すると

これに関してシリーズ構成の佐藤大はインタビュー記事の中で「王道が大切だ、定番は全部やろう」と、その意気込みを語っている[15]。

というような意図があったことが分かります。個人的には物語が面白くなり、そこに悪意と悪影響が無ければ何をやってもいいと思いますけどね。

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少し内容に触れますが、この作品はフィロソフィー・フィクションと銘打っているだけあって(ちょっと大袈裟な表現だとは思いますが)、様々な対立を描くことで作品全体を通じて「人とは何か」を問いかけるような構造となっています。大人と子供。父と子。兄と弟。人と人有らざるもの。信じるものと信じざるもの(チベット仏教を模したヴォダラク)。価値観。第一階層と第二階層(『罪と罰』で言うところの)。持てるものと持たざるもの。善と悪。男と女。カルチャーとサブカルチャー。
以上のように、これでもかこれでもかと二項対立を登場させます。それが指し示すものは、簡単に二元論では語れないということ。何事も相対的であるということ。もちろん、このような作品のメッセージは安易な左翼思想のような盲目的で非現実的な理念や理想ありきの類ではありません。あくまで現実的に、丁寧且つ残酷に各対立を描写することで、見る者に白や黒では無く灰色の領域の存在を強く訴えかけてきます。全ては濃淡の差でしかないのだと。

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ダラダラと書いてしまいましたが、簡単に言うと面白いので一度くらい見ても損は無いと思います。アニメを毛嫌いしている方も是非。映画版は時間があれば別の機会に触れますが、全く別物なので悪しからず。佐藤大氏はどうして映画版に関わらなかったのかなと。