Ultimate Ears Triple.fi 10 Pro

アルティメットイヤーズ・テンプロのことを、そろそろ語らなくてはならない頃だと思う。僕にはきっと、その義務があると思う。
すいません、西尾維新から盗用しました。要はイヤホンを買ったというだけです。
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しかしながら、やはりイヤホンの重要性についてはきちんと語るべきだろうと思う。イヤホンとは、とどのつまりスピーカーである。言い換えるならば音を生み出す装置そのものだ。よく誤解されているのだが、iPodウォークマンは音を生み出すわけではない。ただ記録から音を読み取るだけだ。従って音の中核・本質を担っているのはスピーカーなのである。
翻って、世間には随分とたくさんの酷いイヤホンが流通していると思う。再生機の付属品を筆頭に、低品質イヤホンの音には耳を塞ぎたくなる程だ。そんなことはない、と思う人もいるかもしれない。しかしそれは劣悪な音質に慣れているに過ぎない。原音の素晴らしさにただ出会っていないだけなのである。
イヤホンはスピーカーの中でも実に特異な存在である。通常スピーカーは我々の身体の外部に置かれる。外部から音が生み出される。ところがこのイヤホンは我々の身体に挿入される。つまり我々の内部から音が生み出されるのだ。それだけに生み出す音の重要性は高く、決して疎かにしてはならない。
では劣悪な音とは何か。残念な音とは何か。それは端的に言えば原音を無視した音である。イヤホンで特に顕著に現れる傾向としては、原音へフィルターが何層にもわたって掛けられているような印象を受ける音だ。所謂ハイエンドのイヤホンはそのフィルターを一枚一枚丁寧にはずしてくれる。くぐもった音が透明感を帯びる。平面的であった音が立体的に広がる。残念ながら、ライブ会場にいるような気分になれる、という表現は間違っている。ただ、レコーディングスタジオの録音風景が目の前にに広がるのは間違いない。音が空気感を持つのだ。


音楽はロゴス(論理)とパトス(感情)の中間にある存在である。だからこそ深く我々の魂を揺さ振る。心を豊かにする。村上春樹はエッセイの中でこう言っている。

音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた深く優しい個人的情景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は―つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生は―もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。


えらそうなことを半分冗談で色々と書きましたが、かんたんに言うとイヤホンって凄く大事ですよ、高いイヤホンにはそれなりの理由がありますよ、びっくりするぐらい音が変わりますよ、ということを言いたかっただけです。本当に今回取り上げた通称10プロは素晴らしい製品なので、是非一度電気屋さん等で試聴してみてください。知人友人に試聴させると、ほぼ100%の確率で驚いてくれます。